第18章 制約には切手を
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「ん…………んん?」
体が、というか服のやけにもさもさしたかんじに、目がさめる。
周囲はがやがやと賑わっていた。
目をこすり、横たわっていたため体を起こすと、
「――っ!?」
頭に、とてつもなく柔らかいなにかが当たった。
「あら! もう起きたのね」
「なななななぜ膝枕を!?」
キョドる私に、ほがらかにエリザが微笑んだ。
柔らかいなにか云々は、無論少年誌にありがちなシチュエーションにおける例のアレである。
「カチューシャずれちゃってるわ」
エリザはそう言うと、私の頭の上に手を伸ばした。
私、カチューシャなんてしていただろうか?
いや、見るも無惨に清々しいパジャマだったはず。
唯一の救い、不幸中の幸いは抱えていた枕がただの枕だったことだ。
もし、もちめりかとかもちどいつとかのぬいぐるみだったら、状況のカオスさに拍車がかかっていた。
そう思いながら自分の服装に目を落とすと、
「え……ええええええええええええええええええええ!?」
驚愕のあまり、叫んでしまった。
そのせいで集まった視線に刺されながら、急激に体の温度が上がっていく。
――私は、メイド服を着せられていた。
「なぜ!? もう少しまともな着替えはなかったんですか!? パジャマより悪化してる気がするんですけど!!」
「とってもかわいいわ!」
「そういう問題じゃないいいいいいいいいいいいいいいい!!」
天を仰ぎ頭を抱える。
黒と白が基調とされ、過剰ではないフリルとレースがあしらわれた、とても可憐かつ清純っぽいメイド服だ。
見る分にはいい、だが着るとなると話は別だ! そうだろう!?
しかし、ウフフと笑う姉さんを見て、なに言ってもこらダメだとわかってしまった。
これなんて公開処刑状態に、果てしなく泣きたくなる。
互いに「GJ」とキリッとして頷き合う菊とエリザ。そうかそういうことかこのやろう。