第18章 制約には切手を
ガタン、と盛大に椅子が倒れる音が、痛いほどの沈黙を切り裂いた。
すぐ近くにいたリヒテンが、腰をあげて私を見つめていた。
熱心な瞳は、なにかを非常に言いたげにひらかれている。
というかちょっと震えてませんリヒちゃん? それにものすごく嫌な予感がするんですけども?
「……あ、あの――!」
「すみません切手化だけはやめてください」
え? となぜわかったのか、驚いたような表情のリヒテン。
あなたの手元のノートを見れば否が応でもわかってしまいますぜ姫。
「リヒテン」
にゅっとリヒテンの背後からバッシュが出現した。
さすが二人が並ぶと壮観だ。
こんな状況でなければ、我らが本田さんにカメラを貸してもらって激写しまくっているはず。
「妹がすまない」
「で、でもお兄様……」
リヒテンをいさめながら、バッシュが私に冷静すぎるほど冷静に言う。
さっすが! こんな状況でもバッシュさんは一味違いますね!
それからバッシュさんは、リヒテンに向かって言った。
「我輩があとできちんと交渉しておくから」
確かに一味違いました誰か早くツッコんで。