第16章 尋問は庭先で
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「ヨンス電話鳴って――」
「あーくっそー! なんなんだぜこれ!!」
香が部屋に入ってきたのと、ヨンスがベッドにダイブしたのは同じタイミングだった。
さきほどまで操作していたであろうパソコンのディスプレイには、青い画面に白英文字がところ狭しと羅列されている。
両手を伸ばしうつ伏せのヨンスの背中。
そこにねぎらいの気持ちをこめて、香はひょいと携帯を投げる。
「痛っ!?」
「湾からcall」
「ふつうに渡せなんだぜ……」
納得いかなげにヨンスが口をとがらせた。
素知らぬ顔で、机の上にあるヨンスの眼鏡をかけてみせる香。
酷使し続けていた目をこすり、ヨンスは電話にでた。
「もしもし」
「どう? パスワード解けそう?」
「もう意味わかんないんだぜ。完全ランダムっていうかなんていうか……まるで毎秒パスワードが変更されてる、みたいな意味不明さなんだぜ」
「パスワード探しは依然難航中、ってことネ」
「……」
ヨンスはきまずげに黙りこくった。
サラっと割り出してやるんだぜ! と豪語した手前、数時間の格闘もむなしいものとなっているのは居心地悪い。
パソコンの画面を覗きこむ香を横目に、言葉を探しあぐねていると、
「とりあえず、1時間後くらいにそっち寄るから」
「え?」
「疲れたでしょ? 差し入れしに行くヨ~ちょうど寄り道の経路だしネ」
「え? ちょ――」
こちらの返答も聞かずに、じゃあネー! と一方的に電話が切られた。