第16章 尋問は庭先で
「どうした?」
「いっいえ、なんでもありません!」
反射的に否定が口をついた。
アーサーが訝しげに首を捻り、私を見る。
追及されたらまずい。
私は目を泳がせて、必死に言葉を探す。
「……あ、あれ? どうしてテレポーテーションのタイミングがわかったんですか?」
考えているうちに、本当に疑問が浮かんできた。
さきほどのアーサーを思い出すと、まるでテレポーテーションをコントロールできているみたいだった。
まさか、んなアホな。
いくら星のステッキを振ったって――
「……そうだよ」
私と同様、我に返ったがごとくアルが低く呟いた。
彼の目が、ハッと見開く。
「そうだよ! やっぱりおかしい!! このあいだはうまく誤魔化されたけど、今日こそは何をどうしたのか1から10まで教えてもらうんだぞ!!」
、、、
「そうだな、こちらばかり情報を漏らしている気がする。今のこと、教えてもらおうか」
「俺たちやっぱりテレポーテーションしたの? すげー! 兄ちゃんに話してあげたいな~」
「私も興味あります。詳しくお話を伺いたいですね」
4人が4人、それぞれのスタイルでアーサーに詰め寄る。
彼の顔がひきつった。
抵抗もままならず、いや、ちょ、などとカタコトになっている。
そしてとうとう最後の希望とばかりに、
「公子……!」
と、袋小路に追い詰められた子猫のような視線で救助信号を発してきた。
当然のごとく、優しく微笑んであげる。
気分は私に倒れてきた女神像で、にこりと口の端をあげると――顔に水滴が落ちてきた。
「……雨、降ってきましたね」
「よしっ連行するぞー! DDDDD!」
「わっ、ばかやめろおおおおおおおおおおおおおおお!」
アルに担がれ運ばれていくアーサー、まるで彼に呼応するように雨足が強まった。
そのあとを小走りに追う枢軸3人。
どこまでも対照的な5人であった。