第16章 尋問は庭先で
「そんなわけで移動先はわからなかった。そこで、俺は考えた」
「……自分が消失点にいれば、移動先の再帰点に行ける。そう考えたんだな?」
ルートの問いに、アーサーは頷いた。
菊の話を思い出すと、物の移動はあっても人の移動はなかった。
もし人が勝手に移動してしまったら、失踪事件が多発しているはずだ。
移動するのは物だけなのか? でも現に今私たちは――
「随分思い切ったね~」
「ただの考えなしの馬鹿だよ!」
「アル黙れ。
移動、いやテレポーテーションが起きるタイミングはまだ解明できていない。ランダムかもしれないし、何らかの影響を受けているのかもしれない。
しばらく庭で張り込むつもりだったが、ラッキーなことに二時間待ったら突然……本当に魔法みたく、気づいたらあの駐車場にいた」
「魔法みたいなというところをもうちょっと詳しく」
「公子も体験しただろ、あんなかんじだ」
「あ……そうですね、はい」
“あの死んだ街も?”
濁した言葉の続きは、口に出せなかった。
アーサーの口振りは、なんの通過点も経ず、まさに庭の消失点Aから、駐車場の再帰点Bへのテレポーテーションを表している。
あの静寂に沈んだ街Cなんて
――私しか、知らない?