第16章 尋問は庭先で
「VOCALOIDだっけか? いくら高性能でも、アニメキャラで装飾された発信器は……まぁ目立ってよかったが」
「痛発信器とか言わないで下さい!」
「いや言ってねぇし」
はぁ、なるほど。
呪詛のような声音にも納得できてしまう。
と、菊の瞳が私にとまる。
私はびくりと固まった。
「公子……さん……」
噛みしめるように、菊が呼んだ。
私は目の前にいるのに、今にもどこかへ行ってしまう人へ呼びかけているような。
困惑と安堵と怒りとが混ざった表情。
その唇が、静かにひらく。
「なんの……なんの前触れもなく急に姿を消されたのには、公子さんの故意ではないとしても大変心を痛めましたが――」
「は、はい……」
なにかを押し殺した、低い声に縮こまる。
とんでもない心配をかけたことを、ひしひしと感じる。
土下座したい気分で俯きがちになると、
「またお会いできて、嬉しいです」
ふわりと、柔らかな声が降ってきた。
怖い顔をといて、菊が小さく微笑していた。
つられて口元が緩む。
「私もです!」
それから、制服(+その他)を取りに来たこと。
湯のみのこと。
(私、ルート、菊の謝罪合戦と化した)
それらを経て、アーサーのターンとなった。
空を見上げながら、彼は続きを話し始める。