第2章 邂逅と眩暈と
「私は信じます」
「!?」
意外にも、口火をきったのは菊だった。
「最近そのようなラノ――いえ、小説を読みました。それに、最近起きていることを考えれば……」
ん? 最近起きていること?
「そして公子さんは敵――害意のある方ではないようですし、嘘をついているようにも見えません」
「て、敵っ!?」
物騒な単語に思わず叫んでしまった。
が、菊はなにも言わず。善処されてしまった。
「なにより……」
菊は少し目を伏せ、その流し目のような視線で私を射抜いた。
なにもかもを見透かすような、瞳の深い漆黒に落ち着けない。
「害意のある方でしたら、お風呂で倒れてしまうような可愛らしいことはなさらないかと」
「~~っ!?」
にこ、と、麗しくも悪戯っぽい笑みを投げられる。
かあっと顔が熱を帯びた。
くそっ!! 貴様は本当にあの慎ましやかな祖国なのか!?
果てしなく、遊ばれている気がする。
私は恥ずかしさに耳まで真っ赤にして、ひたすら俯いていた。