第2章 邂逅と眩暈と
「……存じております。えーと、公子さん――」
「大丈夫です! 私は正気です!」
菊の声が耳に痛い。
それを押しとどめて、私は早口でまくしたてる。
「私が来たのは皆さんのいる日本ではなく、言うなれば桃太郎の世界――つまり違う世界、別世界の日本から来ました。
なぜ、どうやってかは、私にもわかりません。なにが起きたのか、私が聞きたいくらいです。私はなにも知りません。
ただの女子学生なんです。お小遣いのやりくりにひいひい言ってる一般庶民です。非力だしなんの力もありません。そういえば腕立てふせ一回すらまともにできないんですよ。
つまりなにが言いたいかって私はただラジオをつけただけなのにどうしてこうなったんだぁああああああああッ!!」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
そう言葉を叩きつけると、息が少しあがっていた。
自分でも、なにを言っているかわからなかった。
一同は私の勢いに圧されたのか、黙りこくっている。
……信じてもらえるわけ、ないか。
むしろ信じろというのが無理なハナシだ。
私は口をつぐみ、ただ反応を待つしかなかった。
えぇい、もうどうにでもなれ!