第15章 廃マンションにて
驚いて振り返る。
そこにはフェリちゃんと菊をわきに抱えた――アルフレッドがいた。
焦燥に息を切らして、全速力で走ってきたことがわかる。
その顔には、怒りと懇願がないまぜになって浮かんでいた。
訝っていると、頑なにつぐまれていた口がひらく。
「アーサー……君は、自分が何をしようとしているのか、わかってるのかい?」
半ば睨みつけるような眼差しがアーサーを貫く。
その火傷しそうな視線を悠然と受けとめ、アーサーは口元で笑った。
「ビビってんのか?」
「なっ、違う! 俺はただ不安なんだ! わかってないことばかりで――その……君になにが起きたって、おかしくないんだぞ!?」
「心配してくれんのはありがた――」
「心配なんかしてないんだぞ!!」
「……いが、なにせ緊急なもんでな」
アーサーの言葉に、アルが私の方を向く。
迷いや躊躇い、そして諦めが宿った青い瞳だ。
傍らのルートも、二人のやりとりに何らかの確信を得たらしい。
目つきが厳しくなっている。
なんの話をしているのか。
私だけ、わかっていないようだ。