第15章 廃マンションにて
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ホコリっぽい玄関を抜け、亀裂の目立つ階段をおりていく。
どこへ行くんだと言いたげなルートだったが、沈黙を選んだようだ。
足音だけが、あたりに響いていた。
アーサーはC棟を出たばかりか、ついにはマンションの敷地からも出て行った。
その足取りはよりひとけのない、建物のまばらな方へ歩いていく。
そして、とうとうその足が止まった。
「ここから俺の家に行けるぜ」
彼が手で示した場所。
そこは、立入禁止とばかりに鎖で封鎖された、空き地も同然の駐車場だった。
絶賛困惑中の私とルートに、アーサーはどうだ! といい笑顔を向けてくる。
えー……と
反応しかねていると、ふいにルートが息をのむ。
「まさか、貴様――」
何を考えついたのか。
しかしアーサーは、そのリアクションに満足したようだ。
じゃら、と鎖をポールから外し、砂利の敷地内へ足を踏み入れようとする。
「待て!」
突如、実に不意なタイミングで叫び声が上がった。