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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第15章 廃マンションにて


「あれ? ルートは……」

疑問に思って体を起こすと、ばさっとなにかが落ちた。

それはアーサーの上着だった。

どうやら私にかけてくれていたらしい。

「あ……上着ありがとうございます」

「いっ、いやお前のためとかじゃなくてだな! その、しっ紳士だからな、レディーを気遣うのは――」

「あの、ルートヴィッヒさんはどこに?」

はいはいツンデレ乙ツンデレ乙と思いつつ、そう尋ねる。

アーサーはあらぬ方向に目線を泳がせながら、清々しいまでのツンを発揮していたが、

「……知らねぇよ。あの野郎黙って勝手にどっか行ったからな」

その顔がムスッとふてくされた。

ルートの名前を耳にして、機嫌を損ねたらしい。

あからさまに嫌そうに眉をしかめている。

「そうなんですか……」

「あ、いや、そこまで遠くには行ってないはずだ」

私の気落ちした声に、アーサーは慌てて言葉を修正した。

そのペリドットのような瞳には、どことなく落ち着きがない。

根掘り葉掘り質問攻めにしたいのを、我慢しているように見える。

――彼はどこまで知ってるんだろう?

私が口をひらこうとすると、先にアーサーが尋ねてきた。

「その、ルートヴィッヒから聞いたんだが……もう体は平気なのか?」

――なるほど、気遣ってくれてたのか。

「はい、もうすっかり」

私は上着をたたんで渡した。
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