第15章 廃マンションにて
「もう……だめです……っ! あぁっ、それだけは……!」
「!?」
ギョッとして隣を見ると、菊がうなされていた。
呼吸を乱し、顔を苦しげに歪めている。
一体どんな悪夢を見ているのか。
なんというか、その、
すごく……卑猥です……
とてもいたたまれないというか、居心地の悪さを感じる。
アーサーも同じようだ。
「一体菊さんになにが」
「店に戻ったあと、しばらくしてアルが来たんだ。俺が目を離したかと思うと……いつの間にか、菊が倒れていた」
「それは……どういう……」
「ただひとつ言えることは、菊の口に鮮やかな青いクリームがついていたってことだ」
「マジでどういうことですかソレ!?」
まさか、無茶をして腰を痛めた菊に無理矢理青いケーキを食べさせるんだぞ作戦を決行したとでも言うのか!?
おののいていると、頭を向けていた方に2人の姿が見えた。
フェリちゃんとアルだ。
頭をコテッとつきあわせて――若干フェリちゃんが寄りかかられすぎて、つらそうな体勢だったが――すやすやと眠っている。
フェリちゃんはシエスタ、アルは徹夜の限界がとうとう来た、といったところか。