第15章 廃マンションにて
「わざわざんなことしなくても……」
「それは着せて欲しいということでしょうか」
「はっはぁ!!? ちがっ、なんでそんな――」
「そんな?」
「なっ……なんでもねえよばかぁ!」
怒鳴られ上着をひったくられる。
どことなく顔を赤らめてらっしゃるが、どうしたのやら。
「大体な! お前何者なんだよ!」
「これは申し遅れました、主人公子という者です」
「いやそうなんだがそうじゃなくて……なんで逃げたんだよ」
「アーサーさんがスコーンを持っていたからなんですが……」
「つかなんで俺を知ってる口振りなんだ?」
「……それには色々ありまして……。アーサーさんこそ私を知ってる口振りで『聞きたいことがある』とか言ってましたよね」
「あー……それは色々あってな……」
……なんだか、話し合いが限りなく平行線を辿っている気がする。
私は仕切り直しとばかりに息を吸った。
「とりあえず、私の話を最後まで聞いてくれますか?」
そう問うと、アーサーは真剣な表情になって首を縦に振った。
私は1回目のトリップから、2回目の故意のトリップまでの概要を説明し始めた。
無論、ところどころ(お風呂場のくだりなど)細かいところは省いた。
表情豊かなリアクションはあったものの、アーサーは終始黙って口を挟まなかった。
私がひとまず言い終えると、アーサーは腕を組んで
「違う宇宙……か……」
と、一言呟いた。
しばらく、フェリちゃんとアルの寝息だけが聞こえた。
私もアーサーも、深く考えこんでいた。
地震や“ラジオをつける”というキーアクション、おそらく周波数も同じだ。
なぜ、“私”が“ここ”に来たのか、または招かれたのか。
“私がいた場所”はどこで、“ここ”はどこなのか。
違う宇宙? 次元?
なにもわからない。
思考を重ねれば重ねるほど、余計に頭がこんがらがってくる。
第一に――
“これは偶発的な出来事なのか?”