第14章 高密度な静寂における解決策について
「彼女になにをしたんだい」
彼の第一声は、それだった。
無表情で、それでいて底冷えする怒りを内包しているような。
回答など必要とせず、自らの決めつけですぐにでも動き出しそうな。
そんな声だった。
それにぴくりとも動じず、毅然とフェリシアーノは言い放つ。
「逆に聞くけど、その手にある携帯は誰のものなの?」
「見た通り菊の携帯だよ。君も知ってるはずだろう?」
「ふざけないで。どうしてアルフレッドが菊の携帯を持ってるの。菊になにをしたの」
「なっ!?」
フェリシアーノの指摘で、ルートヴィッヒも気づいた。
たしかに菊の携帯がその手に握られていた。
嫌な想像が頭を駆けめぐる。そんな、まさか――
「先に質問したのは俺だよ。もう一度聞く、彼女になにをした?」
「あぁそっかわかった、菊の携帯にずっとかけてた俺の携帯の電波を逆探知してここまで来たんだね。でもふしぎだなぁ、菊がお前に携帯を預けるとはとても思えないよ」
「ご明察のところ悪いけど俺の話を聞いてたかい? なぜ彼女がそんなふうにぐったりしてるのか教えてくれよ」
「あいにくだけどお前に教えることはなにもないよ。俺たちは急いでるんだ。質問には答えた、次はアルフレッドが菊のことを話す番だ」
「そのユーモアは理解できないなぁ。それじゃ俺も“菊は眠ってる”としか言えないんだぞ」
一触即発、まさにその空気だ。
口を挟むこともできず、ルートヴィッヒは2人の顔を交互に見る。
こいつら――特にフェリシアーノ――、こんな奴らだったか?