第14章 高密度な静寂における解決策について
物置から出ると、さびれた“いかにも”な廃マンションが現れた。
「うぁ……」
「ひぃっ!」
「っ!? ……って今の呻き声は公子の声じゃないか!」
「ごっ、ごめんびっくりしちゃって」
腕の中でぐったりしている公子。
さっきまで元気そうだったのに、この変わり様だ。
思えば彼女と最初出会ったときも、このように体調が悪そうだった。
しかし、その後憑き物がおちたようにケロッと治っていた。
それで安心したのが、間違いだったのだろうか。
ルートヴィッヒの中に焦燥が降り積もっていく。
「向こうの棟――C棟は施錠されてないはず。開いててここから一番近いのはそこだよ」
「わかった」
フェリシアーノの先導で歩いていく。
彼の足取りも、いつもより速かった。
周囲に気を配りながら移動していると、建物が見えてくる。
“C棟”と銘打たれたそれは薄汚れ、ヒビが絶妙な具合に不気味さを醸し出していた。
不意に、フェリシアーノがぴたりと歩みを凍らせた。
すぐ目の前に入り口、というところで。
地面に糊付けられたように動かない。
そればかりか、彼の瞳は大きくひらき、唖然としていた。
「フェリシアーノ?」
尋ねた彼の、目つきが変わった。
すうっと鋭く細められた瞳は、他の誰でも、何でもなく、ただ眼前を見据えていた。
思わず身体が竦んでしまいそうな視線の先に――
「――アルフレッド」
名を呼ばれた彼が、入り口に門番のように立ちふさがっていた。