第14章 高密度な静寂における解決策について
やわらかな震動が起こり、エレベーターが止まる。
扉がひらき、小さく薄暗い物置のような部屋に出た。
背後で音もなく扉がとじる。
振り向いて、エレベーターの入り口があった場所を見ると、そこはただの壁だった。
うまく隠したものだと、いまさらながらルートヴィッヒは感心する。
「ここを出て店は遠いし、ルートも公子ちゃん抱っこしたままじゃ長距離移動は難しいよね。やっぱり兄ちゃんか誰か呼んで車とか出してもらわないと……早く公子ちゃんを安静にしてあげたいし」
「落ち着け、慌てても仕方ない」
「慌ててないよ、冷静なつもり。とにかくこのせまい物置から出よう。この外は確か廃マンションの敷地内だったはず」
すらすらとよどみなく流れる言葉と、一分の隙もないフェリシアーノの瞳に、ルートヴィッヒは驚いた。
この危機的状況にへばっていても不思議ではないのに。
獲物を見定めるがごとき冷静さだ。
たまに、本当にたまにこういうことがあるから、こいつがわからない。
「でも……アーサーんちの廃マンションとか、怖すぎるよね……」
「あ? あ、あぁそうだな……」
ふえぇと泣きそうなフェリシアーノ。
――やっぱり、こいつはわからない。