第13章 at the later lunch time
「なんも心配いらねえあるよ。影ほども痕跡を残してねーある」
「……はい?」
「――クラッキングは、完璧だったある」
「はいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」
のけぞり、たまらず悲鳴に近い叫び声を上げてしまう。
彼から飛び出た“クラッキング”の意味が一瞬わからなくなった。
ひょっとして“クッキング”の言い間違え? それとも聞き間違えたのかな?
そんな現実逃避をしながら、自信満々の表情を浮かべている耀をまじまじと見る。
それは……明らかに無理をしている笑みだった。
「オワタ」
「菊みてーなこと言うんじゃねーある! 菊だって賛成したあるよ!!」
「あのときの菊さんかっこよかったヨ!」
まくしたてる湾ちゃんの声は裏返っていた。無茶しやがって……
「だいじょーぶだよっ!」
などと思っていると、突然うしろから肩に飛びつかれた。
見れば、私と湾ちゃんの間でフェリちゃんがそれはもうニコニコと笑っている。
「ルートもいるし、菊も耀もいるし、大丈夫に決まってるって!」
「俺もいるぜフェリちゃん!」
「そうだよギルベルトもいるし!」
……とは言いましても。
「ていうか二人から離れるある!!」
「ひゃあっ!? その中華鍋はシャレにならないって!」
中華鍋を振りかざす耀に、フェリちゃんがルートの背中めがけダッシュする。
複雑な、何ともいえない苦い表情を浮かべるルート。
ついでのように呼ばれ、ややダメージを受けたように見えるギル。
それから、「年寄りが暴れるな」と言わんばかりに、しかしどこか楽しんでるように止めに入ろうとする湾ちゃん。
――なんか、もう笑えてきてしまった。
彼らならなんとかなるだろう、そんな根拠のない安堵感が湧いてくる。