第13章 at the later lunch time
慌てて耀の手元の画面を見ると、差出人欄に“香港”とあった。
菊からではなく少しがっくりする。
しかし添付ファイルの名前を見て、瞬時に意識がとられた。
“ИΚИファイル6”
そこに記されたのは、あまりに理解しがたい――否、理解したくない単語だった。
なぜならば、それは、
「ロシア宇宙科学研究所……」
「よく知ってるな」
「ある小説の黒幕でして……」
「……そうか……」
そう、ИΚИとは“ロシア宇宙科学研究所”の略称。
つまりこの添付ファイルは、その研究所のファイルということだ。
終始ローテンションの私とギル。無理もない。
ギルに至っては表情が引きつっていた。
なぜか、嫌な予感がする。
それを打ち消したくて、私は耀に尋ねる。
「い……いつのまにイヴァンさんのとこと協力してたんですね!」
「……」
耀は、無言で清々しい笑みを浮かべた。
そのわけのわからない唐突な微笑に、脳内でサイレンが鳴る。