第12章 幻想変動率XX%まで
「――ってそれおかしくないですか!?」
「かなりおかしい」
「めちゃくちゃおかしいある」
二人の声がデュエットする。
ルートは困惑のためか厳しい顔。
耀は勘弁してくれと言わんばかりの表情だ。ホント嫌そう。
それでも、グラフを指さしながら口を開いた。
「これは月齢を横軸、意識障害件数を縦軸としてるある。場所も右上からフィレンツェ、ロンドン、島根県、アストラハン――これはロシアある、フィラデルフィア、コペンハーゲン、みんな違うある」
島根県という絶妙なチョイスへの感慨もあり、私は頷く。
それになぜ月齢を使ってるのだろうか?
「当然分母となる人口、発生件数も違うある。けどパーセントに直すと、全部一緒ある。ぜ・ん・ぶあるよ!? 他にもデータがあるバンクーバーや香港、チューリヒ、ニュージーランド全土とか、分母もなにもかも違うのに全部が全部変動率が同じある! わっけわかんねーあるッ!!」
「おっ落ち着いて!!」
うわぁあと頭を抱え叫ぶ耀を、必死で湾ちゃんと慰める。
その中で、今言われたことを考えていた。
ニュージーランド全土と島根県。
分母の人口は全く違う。
そしてそれぞれの地域での意識障害件数も違う。
しかし、その増減の推移をパーセンテージに直すと、全部が全部一緒だなんて。
まるで――
「……完璧に計算された度合いで、なにかの力の影響を受けてるみたい」
「なんの力だよ?」
「……月?」
ギルと私は顔を見合わせる。
一同は、深いため息に包まれた。