第12章 幻想変動率XX%まで
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一息つくと、なぜかギルの私への対応の話になった。
「まあ、なかなか警戒をといてもらえなくて、それなりに怖かったです」
「兄貴……」
「俺は――経験上、女だからって警戒を緩めねぇんだよ」
エリザさんに聞いていただきたい。
「それに俺はなにも聞かされてなかったんだぜ? いきなり現れた女を怪しむな、って方がムチャだろ」
聞かされてなかったのか……
「しかしだな――」
「自分のつとめは果たしたつもりだぜ」
至って真面目な顔で言い切った、ギルの言い分はもっともだ。
彼の仕事は地下研究所の番人。
「ギルベルト・バイルシュミットさんは間違ってません。地下研究所の警備として当然のことをなさってました」
「だろ! ってなんで名前を……しかもフルネーム呼び――」
「私もかなり挙動不審でしたし、それにギルベルト・バイルシュミットさんに色々気を遣わせてしまいました……申し訳なく思っています。ありがとうございます」
「だからなんでフルネーム呼びなん――」
「でもそういうしっかりしたところ、さすがだと思いました」
自分でも驚くほど、素直に言葉が出てきた。
この短い間にたくさんの面倒をかけてしまった。
私をここに手引きしたルートのためにも、きちんとしておかなければ。
「お……おぉ」
フイッとそっぽを向くギルベルト・バイルシュミットさん。小学生か。
というか若干顔が赤くなっているような。
噛みそうなフルネームを連呼していると、
「せっ、老師老師!」
湾ちゃんが鋭く声をあげた。