第12章 幻想変動率XX%まで
「兄貴、それくらいにしたらどうだ」
妙にイライラした声音のルートが、ギルを引き剥がす。
「今の症状は意識障害だな」
「それじゃ……みんな……幻だったんですね?」
ルートはしっかりと頷いた。
よかった、本当によかった。
無意識に力が入っていた肩が下がる。
これが異変――“意識障害”か。
身をもって経験するとは。
スッと背筋に冷え切ったものが走った。
まだ脳裏に焼き付いている。
湾ちゃんの垂れた髪の黒。
耀の冷たい体の感覚。
フェリちゃんのもう起きそうもない背中。
そして、ギルの命を失った瞳。
――あんなもの、二度とごめんだ。
「……怖かったあるか」
「みんなが……し、死ん――」
「わかったある。思い出す必要なんてねーあるよ」
耀はふわりと優しく微笑して、私の両手をとる。
柔らかく、血の通った暖かさが伝わってきた。
「震えが止むまでこうしててやるある」
「へ……」
私、まだ震えてたんだ。
「……ありがとうございます」
「にーにとして当然のことある」
ドヤと息巻く耀。
……本当に、よかった。