第12章 幻想変動率XX%まで
「公子!」
すぐ目の前に、ルビーの瞳が飛び込んできた。
肩を揺さぶりながら、必死の形相で私を呼んでいる。
「大丈夫あるかっ!?」
「まさか公子ちゃん……」
「しばらく休ませた方がいいだろう」
「ヴェー……ギル、公子ちゃん大丈夫なの?」
私のまわりに、5人が集まっていた。
不安げな表情は硬い。
口々にする言葉は困惑しつつも、ある種の予感を含んでいた。
「もう大丈夫だ。心配すんな」
ギルはそう言って、真摯な眼差しで私を見つめた。
堅固な意志を示すような、強い光が宿っていた。
見えない糸に操られ、私の手がギルの頬にふれる。
ギルは驚いた表情を浮かべた。
「……かい」
「?」
「あったかい……」
手のひらから伝わる温もりに、ぽろぽろと涙があふれてくる。
肌をすべって、しずくが落ちていった。
安堵に緊張がほどけていく。
温かい。生きてる。ちゃんと生きてる。
「ふぎゅっ」
ギルが私の背中を軽く押した。
ぽすっとギルの腕の中におさめられ、頭を撫でられる。
「慰めに俺様が撫でてやるぜー!」
つまり私は抱きしめられていた。
といっても、がっちりではなく対小動物のようなかんじだ。
私は小鳥かおい。