第11章 ある報告書より
「これは……?」
「……」
まるで機器がガラス細工かのように渡される。
もらったアーサーは、その機器の半分を占めるディスプレイを見た。
――そこには、今日の日付と13:49というたった2分前の時刻。
加えて“Mullard Radio Astronomy Observatory――マラード電波観測所”、イギリスにある電波観測所の表示。
さらにその下に、“359nt”という文字が映っていた。
「M6クラスの地震が“起こった”という電磁波です」
「……は?」
アーサーは耳を疑う。
――なぜ過去形なんだ?
そんな疑問が噴き出した。
それとともに胸の中で、得体の知れないなにかが水を吸ったように膨張していく。
「地震予知研究の一環で、電磁波を計測していまして。各地の観測所からのデータを集めてるんです。そして今日は……えー、なんと言いましたか……」
「オリア・ナイファン・ネウだか、オーシェン・ノユク・ネウだか知らねえが、O・N・ネウとかいうふざけた奴だろ」
「そうでした。例のごとくO・N・ネウさんが、イギリスあたりでの天変地異を予言したそうですね」
「迷惑なやつだぜ本当」
「ネットでの発表をご覧になったとき少しテンション上がってましたよね」
「……」
「なので今日は特にデータ収集に力を入れていました。すると不思議なことに……ありえない電磁波データを受信したんです」
菊が白い指で数字をさした。
アーサーはまだ事態がつかめず、目を白黒させて必死に理解しようとする。
低く唸ったすえ、アーサーは再び口をひらいた。