第11章 ある報告書より
「その逆もありえます」
しかし、アーサーの努力もむなしく、菊の言葉はすらすらと流れだす。
「電離圏がこわれる、いえ――
、、、、
こわされて、相殺する力が弱まるのなら」
「なに……を……」
自分の声がかすかに震えているのをアーサーは感じた。
すぐにでも目の前の口を塞いでしまいたい、
そんな衝動に駆られる。
けれど同時に、次に下される宣告をはやる気持ちも抑えきれない。
「菊、お前――」
、、、、、、、、、、、
「外部からの力が強まった、という考え方もできます」
「……!?」
一瞬、放たれたものの意味がわからなかった。
菊の言葉を幾度も反芻し、それが意味するものにようやくたどりつく。
“外部からの力”
それはすなわち、月や他の惑星の重力、潮汐力、宇宙の放射線、磁気などをさす。
それが、増幅させられている?
それが、地球に影響を及ぼしている?
「そんなの――」
無意識に声がもれていた。
いつのまにか握りしめていた拳が、行き場なく震えている。
「そんなの宇宙の創造主とかじゃなきゃ無理だろ! どうしたんだよ菊、なんかおかしいって。それにさっきからなにを隠してんだよ?」
たたきつけるように叫ぶが、語尾は途切れそうだった。
菊は、なにも言わないばかりか、ぴくりとも表情を変えない。
かわりに、機械じみて不気味なほど静かな動作で、携帯機器を差しだした。