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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第11章 ある報告書より


「そんなに不思議ですか?」

おもしろいのか、菊が首を傾げて問う。

アーサーは菊を見たまま、目をぱちくりさせた。

「鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしてらっしゃいますよ」

「え」

アーサーは言われて初めて、自分がそんな表情をしていることに気づいた。

無理もない。

彼が目にした文章は、予想外のものだったからだ。

   ジュピター・エフェクト
「…… 木 星 効 果 」

絞り出すようにアーサーは言った。

なぜ、今さら“木星効果”なんてものを提示してきたのか。

それがわからず、アーサーは返答を求めるように菊をじっと見た。

彼の唇が、ゆっくりとひらく。

「木星効果のメインとなる力は潮汐力(チョウセキリョク)です。これは重力による二次的な力で、潮の満ち引きをうむ一種の引力といえます」

アーサーは落ち着かないのか、手元にあった塩の小瓶を手で弄んでいた。

視線を中空によこたえたまま、菊は続ける。

「月にも潮汐力があります。まさに潮の満ち引きを起こしている力ですね。
この月の潮汐力が地球に及び、地震の最後のトリガーを引く。
同じように、木星の潮汐力も地球に及んで――」

「けど、木星から地球への潮汐力って微々たるものだろ? 影響小さすぎて問題にするまでもない」

「ですが覚えていますか? “摂動力”です。太陽や他の惑星が月に与える引力は、地球が月に与える引力よりとても小さい。
しかしそれらの力が長期的に働くことで、言うなればネチネチとちまちました影響を与え続けることで、月の楕円運動を複雑にしている――そんな作用です」

「ちりも積もればなんとやらってやつか。覚えてるぜ、見せてもらった気味の悪い月の動きと一緒にな。
……たしかに、木星効果は摂動力といえるかもしれないが……」

言葉につまり、アーサーは考えをまとめた。

つまり菊は、

『木星の潮汐力といった地球外の力は、地震を引き起こす重要な要因のうちのひとつ』

とでも言いたいのか?
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