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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第11章 ある報告書より


「私自身思うことがありまして、報告書にあった参考文献を探してみたのです。その関連書籍の一冊が、どうにも気になりまして――」

一度口をきり、菊は手元に引き寄せたかばんから本をだした。

古めかしいそれは、“月の科学”と題されていた。

本をアーサーの前に示しながら、菊は続ける。

「ご存知のとおり、地球の表層にはプレートという岩盤があります。
その移動や、プレートどうしの押し合いによって生じる歪みが、応力――ストレスを高めます。
限界までたまった応力が解放されると、断層がうまれます。
この断層の出現が、揺れの原因です」

「だが、応力解放の引き金の正体は、まだわかっていない」

「そうです。そこで、これです」

菊はあるページをひらくと、アーサーにわたした。

アーサーはおずおずと受け取り、ひらかれたページに目を落とす。

「さすがアーサーさんです。端に小さく書かれた注釈にもきちんと目をとおして、書類に載せてくださるんですから」

「まっまぁな! 菊に出す“地震の書類”ときたら、それなりのものを出さねえと恥ずかしいからな」

唐突に飛び出した褒め言葉に、柔らかな微笑。

それに戸惑いながら文章を追っていた。

さっきから、菊の様子がおかしいように思う。

なんというか、目が据わっているのだ。

彼はなにかを、さきほどの少女以外のまた別のなにかを隠している――

そんな直感を抱いて、読み終えたアーサーは本から顔をあげた。
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