第11章 ある報告書より
店内に入ると、テーブルにはまだ料理があった。
それは和やか(でもない)な食事風景の崩壊がついさっきだったことを、二人に感じさせた。
ひとまず二人は腰かける。
しばしの沈黙と逡巡のあと、アーサーは口を切った。
「き――」
「アーサーさん」
菊が声を放つ。
珍しい遮りと確かな声の調子に、アーサーは虚をつかれた。
――聞きたいことが、山ほどある。
あの少女は何者なのか?
話せなかった事情とはなんなのか?
なにより、なぜクローゼットから出てきたのか?(これに関してはなんとなく見当がついているが)
溢れそうな疑問を飲みこみ、アーサーは眼前の黒い瞳の感情を探るようにじっと見る。
「――……」
菊は一呼吸おき、
「この前、地震の報告書をいただきましたよね」
そう、始めた。