第11章 ある報告書より
フェリシアーノが公子の手をとって走り出し、それをルートヴィッヒとアルフレッドが追いかけ。
結果、その場に残された菊とアーサー。
殺気を立ちのぼらせ本気モードの菊であったが、不慮の体調不良により地面にのびてしまっている。
現在は腰に手を当てヒィヒィしている、という有り様だ。
「私など気にせず、公子さん――いえ、アルフレッドさんを追いかけた方がいいのでは……」
、、、、、、
「全員のためにそうしたいのはやまやまだが、こんな状態のお前をほっぽっておけるかっつーの! 誰だよ急に『こっ、腰が……!』とか言って倒れた奴は!!」
怒気をにじませた声色でアーサーは言い放つ。
菊はいろいろと反論したそうだっだが、例のごとく口をつぐんだ。
その顔は心なしか、いつもより蒼かった。
「実にすみません……」
「ったく介抱する俺の身にもなれよな」
アーサーは地面にへたっていた菊の手をとり、ゆっくり立ち上がらせる。
「……孫に手を貸されるじじいの気持ちです」
「刀なんか振り回したりするからだろ。本当に死ぬかと思ったっつーの」
「……」
菊は、アルフレッドの同行に『NO』を言えなかった自分を改めて呪った。
「とりあえず店の中に戻ろうぜ。その方がいいだろ?」
「えぇ、すぐにでも横になりたいです」
「本当に大丈夫か……」
ふらふらとする菊を見かねたのか、アーサーは肩をかす。
礼を言いつつ、おぼつかない足取りで菊は歩きだした。