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深海のリトルクライ(アルスマグナ/九瓏ケント)

第11章 ひとつの恋が終わる時



(アキラ、アキラ…!)

靴箱まで、全速力で駆ける。神生アキラの靴箱には、まだ外靴が入っていて。私は近くの女子トイレに入り、電話をかける。通話が繋がった瞬間、名乗りもせずに

「アキラ、今すぐ会いたい。いますぐ!2Aの教室で、待ってるから」

それだけ口早に伝え、私は彼の返事も聞かずに電話を切った。



「っ」
「…どういうこと」

私の電話の口調に驚いたらしく、走ってきたのか、肩で息をしながら2Aの教室に入ってきたアキラに、開口一番そう告げた。

「…」
「さっき、先生に会ったの。」
「…」
「…どういう、こと」

罰の悪そうな顔をするアキラに、畳み掛けるようにそういう。

アキラはふう、と息を整えて、私の眼の前までやってきた。ゆっくりと背負っていたリュックを下ろして、私の前で一度咳払いをした後

「…ごめん」

ゆっくりと、深々と私に頭を下げた。

「…どうい…」
「先生は」

私の問いかけを遮るように、アキラは言葉を紡ぐ。

「お前のこと、好きだったんだ。」
「ちょっと、何言って…」
「俺とが付き合う前から、きっと。」

アキラはゆっくりと頭を上げて、私の眼を捉えた。


「と先生は、両思いだったんだ。どこかで、そう気付いてて、でもおなじぐらいどこかで、俺もの側にいたくて。」

今にも泣き出しそうな顔で、アキラはゆっくりと言葉を選ぶ

「でも、先生が先生って立場に悩んでること、が、生徒って立場に悩んでること、それで立ち止まってることに甘えて、漬け込んで…!」

アキラは自分を戒めるように、荒々しく髪を掻く。

「…俺の気持ち、押し切ったんだ。」

私の眼を捉えたアキラの表情は、今までで見た中で、一番悲しそうで。

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