第11章 ひとつの恋が終わる時
(アキラ、アキラ…!)
靴箱まで、全速力で駆ける。神生アキラの靴箱には、まだ外靴が入っていて。私は近くの女子トイレに入り、電話をかける。通話が繋がった瞬間、名乗りもせずに
「アキラ、今すぐ会いたい。いますぐ!2Aの教室で、待ってるから」
それだけ口早に伝え、私は彼の返事も聞かずに電話を切った。
*
「っ」
「…どういうこと」
私の電話の口調に驚いたらしく、走ってきたのか、肩で息をしながら2Aの教室に入ってきたアキラに、開口一番そう告げた。
「…」
「さっき、先生に会ったの。」
「…」
「…どういう、こと」
罰の悪そうな顔をするアキラに、畳み掛けるようにそういう。
アキラはふう、と息を整えて、私の眼の前までやってきた。ゆっくりと背負っていたリュックを下ろして、私の前で一度咳払いをした後
「…ごめん」
ゆっくりと、深々と私に頭を下げた。
「…どうい…」
「先生は」
私の問いかけを遮るように、アキラは言葉を紡ぐ。
「お前のこと、好きだったんだ。」
「ちょっと、何言って…」
「俺とが付き合う前から、きっと。」
アキラはゆっくりと頭を上げて、私の眼を捉えた。
「と先生は、両思いだったんだ。どこかで、そう気付いてて、でもおなじぐらいどこかで、俺もの側にいたくて。」
今にも泣き出しそうな顔で、アキラはゆっくりと言葉を選ぶ
「でも、先生が先生って立場に悩んでること、が、生徒って立場に悩んでること、それで立ち止まってることに甘えて、漬け込んで…!」
アキラは自分を戒めるように、荒々しく髪を掻く。
「…俺の気持ち、押し切ったんだ。」
私の眼を捉えたアキラの表情は、今までで見た中で、一番悲しそうで。