第11章 ひとつの恋が終わる時
「本当に俺と付き合うって決心してくれて、…まじで、すげえ嬉しかった。でも、留学行くって聞いて、俺、やっぱ今のままじゃだめだって思った。」
「あき、ら…」
(無理して笑わないで、って言いたいのに)
言葉が出なくて、ただ、アキラを見つめるしかできなくて。
アキラはゆっくり私に近づいて、包み込むように抱きしめた。
「…いままで、ごめんな。」
「そん、な」
「俺が言えることじゃないけど、押し殺してた気持ち、だしてあげて。」
(が悲しそうな顔するの、やっぱり、辛えわ。)
耳元で、ささやくように言うアキラの声は、悲しいぐらいに優しくて。
「俺、多分さ、先生のことが好きな、が好きだったんだわ。」
へへ、と茶化すように笑っているのに、抱きしめる力はどんどん強くなって。
「あずさが幸せになれるのは、…俺の横じゃない。」
私は、ただ、優しく抱き返すしかできなかった。
「、」
「なっ…」
頬に、柔らかいぬくもりを感じる。
「な…」
「最後のわがまま!」
アキラはいつもみたいなくしゃくしゃの笑顔を私に向けて、ちょっぴり泣いていた。
「口は残しといてやるから!ばーか!」
じゃ、と短く挨拶をして、リュックをばっと取り、彼は駆け出した。
揺れる赤髪が見えなくなって、私の頬にも、涙が溢れていて。
ひとつの恋は、
優しくて悲しい温もりを残して、消えた。
(続)