第11章 ひとつの恋が終わる時
「まーだあいてんのか。」
金持ち学園とは思えない警備の甘さに思わず声を漏らし、はっと辺りを見渡す。しばらく行くことのなかった屋上のロックナンバーはまだ変わっていなくて。
「お邪魔します。」
誰に言うわけでもなく、ドアをあける。
風が気持ち良い。私は両手を広げ、体でその風を感じる。ここで、こんなことできるのもあと数回か。
スカートのポケットの中の四角い箱…タバコを取り出し、火をつける。
「校則違反だぞ〜」
頭上から声が聞こえて、咥えていたタバコを落とす。
「あぁあ、落としちゃった〜、大丈夫か?」
聞き馴染みのある声に、今まで聞かないようにしていた声に、私は振り向くことができなかった。
よ、という小さい声と共に、地面に着地する音。
入り口裏の貯水タンクの上にでもいたのだろうか、先生は私の落としたタバコを拾い、差し出した。
「ほれ、ちゃん。」
優しい声が、私を包んだ。
「九瓏…せん、せ」
*