第11章 ひとつの恋が終わる時
「ありがとうございました。」
両親から留学の話はすでに学校側に連絡が入っており、9月半ばには転校する運びとなっているようだった。
一応私からも挨拶を、と思い職員室に向かい、学年主任やお世話になった先生に頭を下げて回った。
幸い、…九瓏先生の姿はなくて。
ぴしゃ、と職員室の扉を閉めた後、携帯を取り出す。
『今日、先に帰っといて。』
ロングホームルームの時、アキラから届いた短いメッセージは淡白なものだった。
(まだ、返事ない。)
了解〜、部活?と返したのだが、17時を回った今もまだ返事がない。部活だとしても、休憩には必ず返事をくれていたのに。そう思いながら、ぎゅっとスカートのポケットに携帯を入れようと思ったのだが。
(…?)
四角い箱が手にあたり、私の動きは止まった。
靴箱に向かうはずだった足は、違うところに向かって歩みを始める。