第1章 揺れる青髪に、恋
かしゃん、という小さな施錠の音が聞こえたあと、九瓏先生は申し訳なさそうに両手を合わせる。
「未成年の喫煙を認めるどころか、もらい煙草なんて、教師失格ですね。」
制服の内ポケットから、マルボロのミディアムを取り出し、そのうちの一本を咥えた後、先生に箱ごとぽいと投げ渡した。
「はは、確かにね。」
慣れた手つきで一本抜き取り、またその箱を私に投げ返す。
ぼふ、と窓際のソファーに座り、スカートのポケットから取り出したライターで火をつけた後、隣に腰かけた先生にも火をつけてあげる。
「っは~。生き返る。」
先生は悪びれる様子もなく、ゆっくりと煙草をふかした。
「ちゃんも、あんまり吸っちゃダメだからな。」
「なんの説得力もないですけどね。」
「はは、そうだね。」
他愛ない会話を交わし、夏の日差しを受ける。
ゆらゆらと宙に溶けていく煙を二人で眺めるこの時間と出会ったのは、2年生に進級してすぐの事だった。