第5章 悲惨な過去
「へぇ、ここの湖…渡れるんだ~!」
読書をはじめようと
本を開くと、綺麗な高い女の声が聞こえてきた。
ベンチの茂みの向こうで
普段はあまり人が寄り付かない湖を
渡ろうとしているらしい。
(あの制服は…サファイアクラスか)
声の持ち主は全クラス共通の
白いブレザー、スカートに
水色のネクタイをした
サファイアクラスの女。
ゆるふわっとした栗色の髪、
くりっとした瞳、白い肌。
美しい、と思った。
湖をみてはしゃいでいる姿を見て、
お嬢様ではないな、と少し確信する。
俺はもともと身分には興味がないが
興味がないほうがめずらしく、
周りには、サファイアクラスを
よく思っていないやつが結構いる。