第1章 社長令嬢
そこに一台のトラックが
走ってきた
ようやくおじいちゃんは
赤信号だということに気付いたんだと思う
「おじいちゃん!!」
おじいちゃんは私の方をみて
一瞬驚いた顔つきになった
「…っ」
私はとっさに歩道へと飛び込んだ
キキーーーッとブレーキ音が鳴り響き
「ちっ…あぶねぇな!!」
男の人はそう言ってまた走って行った
よかった…守れてよかった…。
周りからは、おおーと歓声が上がる。
「大丈夫ですか!?
突然ひっぱってしまってすいません…」
ひかれそうだったとはいえ
お年寄りに走らせてしまった。
「こちらこそお礼を言わなければならない!
迷惑かけてすまない」
おじいちゃんは、とても優しそうな人だった
「財前さまー!財前さまー!」
反対側の歩道…私がさっきいた
歩道からスーツを身にまとった男性が
誰かを探している声がした
それにしても財前さまって…