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短編集「めくるめく夜」

第3章 ハイキュー 烏養繋心


「・・・ねぇ、繋心。




コーチって楽しい?」




ベッドで裸のまま、寝そべる男女。

肩までのストレートの髪は控えめの茶色に染められていて、ベッドサイドには途中で外したのであろうレースのシュシュが置かれている。
女はぐったりとうつぶせになり 大きめの枕に顔をうずめながら男に問う。

女の隣でけだるそうに上半身をおこし、煙草を咥えるのは金髪の男。
トレードマークのカチューシャをつけたその額にはうっすらと汗がにじんでいる。

この男の名は 烏養繋心。
言わずと知れた名将 鳥養監督の孫であり現、烏野高校排球部コーチである。

繋心は女の問いには答えず、ベッドサイドからリモコンをとりテレビをつけた。
深夜番組の乾いた笑いが響いたが、女は枕から顔を上げようともしない。

そんな女の様子を目で見やりつつ、ベッド脇に脱ぎ捨ててあったボクサーパンツを履くと、女からはぎ取ったニットや下着を持ち洗面所に消えていった。

--ザー・・・・--
水の音が聞こえる。
この音を聞き、「ふぅ」とため息をつきながらゆっくりと体を起こした女は 興味もないテレビ画面をボーっと見つめる。
何を考えているのだろうか。
内容など頭に入っていない ただただ光る画面を眺めているだけだ。

戻ってきた繋心はグレイのスウェットに着替え、濡れた頭にタオルをかぶり ガシガシと拭いている。
シャワーを浴びてきたのであろう。
戻り際、冷蔵庫からミネラルウォーターと取り出し一気飲み飲みする。
半分ほど飲み干したペットボトルを無言で女に手渡した。


ベッドを背にどかっと腰かけ、テーブルに置いてあった情報誌をパラパラとめくる。

勝手知ったる様にふるまっているがここは 繋心の家ではない。

この女、の家である。

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