第2章 獣の住処
「…いや、だから、なんで?中国ってどういう事?」
未だに状況が飲み込めない私。
すると、待ってましたと言わんばかりの満面の笑みで、父さんが口を開いた。
「それがね!パパ、社長さんから『君は才能があるから、海外の支社へ移動してくれ。頼むから』って頼まれちゃったの!」
「ちょっと待った!父さん本社で働いてるんでしょ!?なんで本社から支社に飛ばされるの!」
私はキラキラした目でしゃべる父さんを制した。
父さんは広告プランナーの仕事をしている。
ナヨナヨしている父さんはしょっちゅう仕事で失敗をし、その度に泣きながら家に帰ってくる。
「はぁ。……父さん、その話を聞く前に社長に何かした?」
「え?んーと…
あ、お茶を社長の机にばら撒いちゃった」
「それだぁぁぁ!!」
なんでそんな事をしているのに、父さんはクビにならないのか。
やっぱりそこは、父さんに才能があるからなのだろう。多分。