第1章 Memory
「ありがとう。日吉、私も日吉のことが好きだよ、大好きだよ」
「知っていましたよ、ずっと前から。というか、気づいていないとでも思っていたんですか?あんなに分かりやすかったのに」
「いやぁ…日吉鈍感なんだと思ってた」
「見る目ないですね」
あはは、と笑う黒崎先輩に俺はいつもの調子で毒づいた。
こうしていると、もう明日には先輩がここにいないなんて現実が嘘みたいに思えた。
今日が、今が、永遠に続けばいいのに。
心の中でつぶやいた願いは叶うはずもなく、翌日校内に黒崎先輩の姿はなかった。
代わりに俺のスマホの中で微笑む黒崎先輩は、頬にくっきりと涙の跡が残っていた。