第2章 【武田 一鉄】彼の秘密の一面
「おぉ!大量だね。武田先生?」
夕食後、彼のカバンから色とりどりのラッピング袋が出てきた。
今日はバレンタイン。毎年生徒達からチョコレートをもらってくる。
私の茶化しに少し照れて笑う彼は更に可愛い。
「じゃぁ、彼女からもあげちゃおっかな?…なんか飲む?」
「ワインでお願いします」
私は冷蔵庫に閉まってあったチョコレートと白ワインを出してテーブルに並べた。
「乾杯!」
ワイングラスをカチンと当てて、口に持っていく。
今回のワインは結構アタリのようだ。
「女子高生の可愛いチョコレートには負けるけど、大人なチョコレートで対抗してみました!!」
私はチョコレートを一つ摘まんで彼の口に持っていく。
「はい、あーん」
パクッとチョコレートを口に含んで、しばし無言で味を確かめていた。
「ブランデーですか?」
「・・正解!」
美味しいとニコニコ笑って、もう一個をねだる様に口を開く。
私はもう一粒を摘まんで、彼の口ではなく、自分の口に放り投げた。
「あぁ!!」
自分のチョコレートを取られたとショックを隠し切れない彼はグッと私の顔を引き寄せてた。
「・・返してもらいます」
そう言ってキスをすると器用に舌を使い、私の口からチョコレートを奪う。そして、茫然とする私にクスっと笑うんだ。
生徒達には絶対に見せない、彼のこの顔。
ねぇ、みんなは知らないんだよね。
「…一鉄、ぎゅーってして?」
一鉄は私にハグして、またクスっと笑う。
「もう酔ってしまったんですか?」
「ううん。でも酔いたいから私にもチョコちょうだい?」
「・・仕方ないですね」
彼がくれたキスはブランデーとカカオの味がした。
ねぇ。
本当は可愛い一鉄よりも、こういう一鉄が好きだって言ったら驚くかな?
だから来年はもっとたくさんチョコを作ろうと思ったのは秘密にしておこう。
TheEnd
「キス」「ハグ」「秘密」