第2章 【武田 一鉄】彼の秘密の一面
「ただいま~」
私はパタパタとスリッパを鳴らしながら彼の元に向かう。
玄関からは冷たい風が入ってきて、一瞬身震いしてしまう。
「おかえりなさい」
彼の頭には雪が積もっていて、メガネは真っ白に曇っていた。
私は頭の上の雪を払ってメガネを取る。
曇ったメガネをかけていても、メガネを外されても、彼の視界はほとんど変わらないだろう。
ぐっと顔を近づけて、彼の頬にキスをする。
「わっ!!」
驚く彼に曇りのなくなったメガネをかける。
「お疲れ様。ご飯出来てるよ!」
「うっ、うん」
可愛い。私の彼氏はとっても可愛い。
身長は私とほとんど変わらないし、顔だってカッコイイと言うよりは可愛いし、性格も穏やかで、ちょっぴり頼りない所もある。未だに敬語が抜けない。
それでも私は彼が大好きだ。
私がシチューに火をかけて温めていると、彼はキッチンに来てお鍋の中を覗く。
「シチューですか。美味しそうですね」
「美味しそうじゃないよ?美味しいんだよ?」
私がそう言うとハハハと笑う。眉を下げて困ったように笑う顔がとても可愛い。