第4章 【東峰 旭】義理チョコ、へなちょこ、本命チョコ
「はぁぁぁぁ・・・・」
「何よ、そのため息。辛気臭い」
「そんな事言うなよ・・」
再び大きなため息をつく彼は東峰旭。
私のクラスメイトだ。
見かけとは真逆の性格。
へなへなしていて、猫背で、弱弱しい。
けど、まぁ、優しい奴。
「何?また澤村にでも怒られたの?」
「ちっ、違うよ!」
「分かった!西谷だ!西谷に活入れられたんでしょ?」
私はその澤村とも西谷ともそんなに話したことはないけど、彼らの事はとても良く知っている。
東峰からいつも聞いていたから。
「じゃぁ、何を悩んでんのよ、今回は」
うぅ。と唸り声を上げて、机にうつ伏せになる東峰を見ながら、私はジュースのストローに口を付けた。
「・・・がさ」
「ズズズ。・・へ?聞こえない」
東峰が話し始めたと同時にジュースの紙パックが潰れながら音を立てて最後の1滴を吸い上げた。
「スガがさ。今年のバレンタイン0個だったら罰ゲームって言ってきてさ・・」
「ぶっはっは!なにそれ。そんなんで悩んでるの?」
私が大笑いすると、東峰がうつ伏したまま顔だけをこちらに向けた。
「だって、俺・・去年誰からももらってないし・・」
はぁぁ。と深いため息をついて、また顔を両腕の中にしまい込んだ。
男子って何でそんなくだらない事をするんだろう。と鼻で笑いながらも、そんなくだらない事で本気で悩んでる東峰を見て、何だか可愛いと思ってしまった。
「私、作ってあげようか?」
「・・・えっ!?」
バッと勢いよく顔を上げた東峰。
そんなに驚かなくても・・と思うほど固まっていた。
「私でいいならね?それなら罰ゲームしなくて済むでしょ?」
「・・うん。でも、いいの?ほら、佐藤だってあげる人いるんじゃないの?」
「特にいないよ?」
そっか。と目線をキョロキョロさせている東峰に私は空になった紙パックを手渡した。
「・・これよろしく」
東峰は言われるがまま紙パックを受け取って、ゴミ箱へ捨てに行く。
「断んなさいよ・・」
自分からお願いしておいてそんなことを思いながら東峰を見ていると、とても嬉しそうな顔をして席に戻ってきた。
「さっきまであんなに落ち込んでたのに。バカだなぁ」
そんなことを思いながら、ふふふと笑いがこぼれた。