第15章 大野智 × キケン
彼と出会ったのは取引先の会社。
広すぎる会社で道に迷った私に声をかけてくれたのが彼だった。
「大丈夫ですか?この会社、ムダに広いから迷っちゃうでしょ?」
そう言って道案内をしてくれた。
ステキな人だな、って思ったけど。
彼の左手の薬指には指輪が光っていた。
ちょっと残念だな、と思いながら別れた。
その帰り、また会社の中で会って
「さっきは、ありがとうございました!」
「いえいえ、この後、予定ある?」
急な質問に少し戸惑う
「・・いえ、上司はこのまま家に帰っていいって・・」
「じゃ、一緒に飲む?」
「え、でも・・」
「あぁ、これのこと?」
彼が指輪を指す
「大丈夫、別に一日くらい飲みにいったって(笑)」
「大野、浮気なんてすんなよ~新婚の奥さん悲しむぞ~」
「うっせ、からかうなよ。浮気じゃねーし」
「し、新婚なんですね・・」
「あぁ、別に新婚って言ったってもう子供もいるし(笑)」
彼が子供と遊ぶ姿を想像して少し微笑ましくなる。
「で、どう?」
「あ、はい・・もちろんです」
「よかった!行ってみたかったお店があるんだよね、いい?」
「はい・・」
少し罪悪感があったけど、行くことにした。