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Affectionate Photographs

第9章 手を差し伸べてくれたのは




「…明日、目腫れたら嫌だな…」
凛に膝枕をしてもらいながら泣き腫らした瞼を蒸しタオルでケアしていた汐がぽつりと呟いた。

「明日誰かに会う予定があるのか?」
「無いよ」
「無ぇのかよ」
苦笑しつつ突っ込みを入れ、仰向けに寝る汐の頭を撫でた。


今はこうして落ち着いているが、つい半刻前まで汐は凛に縋りながら声を上げて泣いていた。
幼い頃から今まで我慢し続けてきた感情を爆発させた汐は、凛に縋りながら大粒の涙を流し続けた。


「色々用意してくれてありがとね」
「おう。気にすんな」
汐の目元には温かい蒸しタオル。傍らには氷水が入ったアイスペールで冷やされているタオル。
泣き腫らした目は、冷たいタオルで冷やすことと、蒸しタオルで温めることを交互に繰り返すと良いといって凛が用意したものだった。

「それにしても凛くん、詳しいからびっくりしちゃったよ」
「なにが?」
一体汐は何に驚いたのだろうか。
凛は続きを促した。

「泣いた後目が腫れないようにするにはどうしたらいいか」
「な、それは…」
凛が言い淀むと、蒸しタオルを目元に当てた汐はいたずらな笑顔を浮かべ、こう言った。

「ひょっとして感動映画とかでよく泣くから?」
「ちっ…、ちげーよ!」
図星だ。汐のひょっとしては本当によく当たる。
それを誤魔化すように汐の頬をむにっと引っ張った。

「当たりだね」
「うるせぇ…」
つまんだ汐の頬を離すと、凛は恥ずかしそうに顔を赤くしながら唇を尖らす。
凛の口調から表情まで察したのか、くすくすと楽しそうに汐は笑った。
そんな汐を見て、凛は安堵の笑みを浮かべた。


(笑ってくれた)

よかったと、凛は胸を撫で下ろした。
自分がしたことで汐の笑顔を奪ったかもしれないと心配していたが、どうやらそれは凛の杞憂であったようだ。


「凛くん」
「ん?」
名を呼ばれ凛は汐の顔を覗き込むようにして応えた。
凛の気配をより近くで感じた汐は、目元のタオルを取った。
きらきらと光るローライドガーネットの瞳と視線がぶつかる。

「ありがとう」
赤みを帯びた目元に痛ましさと儚さを感じたが、それ以上に雨上がりの晴れ渡る空のようなすっきりとした笑顔だった。

「いや、俺こそ話してくれてありがとな」
凛もまた晴れやかな笑顔で返し、そのまま身を屈めて汐の頬にキスをした。

「ふふ、凛くん好き」
「ああ、俺も」
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