第7章 Half Year Anniversary!
夕暮れ時の公園で凛と汐は仲睦まじく会話を楽しんでいた。
春の兆しを感じるにはまだ気が早いが、それでもこの日は2月にしてはかなり暖かかった。
「ねぇねぇ凛くん!」
「ん?どうした?汐」
やけに弾んだ声で汐に話しかけられた。
常日頃からテンションが低いわけではないが、特別高いわけでもない。あえて言葉を添えるとしたら、のほほんとしている汐。
凛はどうしたものだと考え始めようとした。
日付は2月の半ば過ぎ。汐がいつも以上にニコニコする理由なんて1つしかなかった。勘繰る必要もなかったと内心微笑んだ。
「今日は何の日でしょうか!」
「お前の誕生日の2ヶ月と1日前だな」
あえてとぼけてみせる。しかも真意を悟られないように真顔で。
すると汐は唇を尖らせてこう言った。
「確かにそうだしあたしの誕生日をちゃんと覚えててくれて嬉しいけど、それだけー?」
汐が望んでる言葉は手に取るように分かる。しかし焦らす。可愛いから意地悪したくなる。
むくれる汐の頬をぎゅっとつまんで凛はあやすようにキスをした。
「拗ねんなよ、汐チャン?今日は2月21日、俺たちの半年記念日。ちゃんと覚えてっぞ」
ニヤニヤと口角を上げながら凛は呆気に取られたローライドガーネットを見つめる。
きょとんとした汐だったが、ゆっくりと頬を緩めると飛びつかんばかりの勢いで凛に抱きついた。
「そ!」
「ぉわっ!?」
座っていたベンチに押し倒されそうになったが、汐をしっかりと抱きしめてそれを阻止する。
そして凛は表情を柔らかくした。
普段記念日をあまり祝わないが、半年は1つの節目になる。
交際を始めた当初、汐が記念日は毎月祝わない方がいいと言っていたが確かにその通りだと凛は今になって納得した。
ひとつひとつに区切りをつけてしまうと〝別れへのカウントダウン〟のように感じる。
記念日の認識の違いや温度差はカップルが別れる原因の上位に入るだろう。
その危険の芽をかなり早い段階で摘み取ることをしておいてよかったと思う。
気づいたら半年経っていた、それくらいの感覚の方がいい。
「凛くん、これ」
凛にくっついていた汐は一旦離れると、スクールバッグと一緒に持っていた紙袋を差し出した。
その中にはラッピングされたプレゼントと思しきもの。
「プレゼントか?さんきゅ。今月は汐にいろいろ貰ってばかりだな」