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Affectionate Photographs

第6章 榊宮の姉と松岡の妹




「あれー?なっちゃん?」
10月暮れの橙に染まる空のもと、さっぱりとした声が響いた。
空を染め上げる茜と同じ色をした瞳は、その声の主を捉えた。
携えた自転車から降りることなく声をかける。

「江さん…?」
その声の主、江は視線がぶつかるなり小走りで寄ってきた。

「やっぱりなっちゃんだ!」
「どうも」
笑みを浮かべる江に夏貴は一瞥をくれる。
少しずつ冷える空気に思わず着ているパーカーの袖を伸ばした。

「どうして駅にいるの?」
「姉さんを迎えに来ました」
「そうなんだ」
「もうすぐ来ると思うんすけど…」
姉である汐からは、この時間に到着する電車に乗ると連絡があった。
駅から一番最初に出てきたのが江だったから、もうじき来るだろう。

「なっちゃんのお姉さんって、昔よく話してた人だよね。会ってみたいから私も残っていい?」
「いいっすよ」


「それにしても久しぶりだね!最近どう?」
「部活は引退しました。今はSC一本で泳いでます」
「部活はどうだったの?」
「夏の全国大会、個人メドレーは金でした。けど、ブレとフリーが銅だった。SCの大会では両方金を獲るつもりです」
かすかに眉を寄せる。思い出すだけでも悔しい。トップを獲りたい。
そんな思いが顔に顕れる。

「そっか。相変わらずなっちゃんはストイックだね」
「自分に甘いようじゃなにも掴めないからね。…あ、姉さん来た」
夏貴の声に江は駅の入口の方を見た。
向こうから歩いてくるひとりの女子高生。その姿を見るなり江は声を上げた。

「見たことある!朝とか帰りとか電車がたまに一緒になる人だ!」
「そうなんすか?」
「うん!すごく可愛い人だから覚えてるの。なっちゃんのお姉さんだったんだ!」
通学の電車でたまに目にする美女、という認識だった。
せっかく降りる駅が同じなのだから一度でいいから話してみたい、江はそう思っていた。

「夏貴、ただいま。迎えに来てくれてありがと。…えっと、隣にいるのはお友達?」
夏貴の隣にいる江に気づいた汐は、ふたりに微笑みかけた。
夏貴の話でしか窺い知れなかった彼の姉が今目の前にいて、その人がいつも自分が話してみたいと思っていた人で。そんな状況に江は、嬉しいのはもちろんだが少し緊張してしまう。
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