第4章 硝子瓶の金平糖 vol.1
【緊張のはなし】
夕方の公園。身体を撫でる風に夏の終わりを感じた。
明後日からお互い2学期が始まる。想いを通わせたばかりの彼女とこうしてゆっくり時間を過ごせるのもちょっとだけおあずけか、と思うと凛は口惜しい気分だった。
本当に少しずつだが、陽が落ちるのもはやくなってきている。
汐の背を照らす夕陽が少し眩しくて目を細めた。
「凛くん、ちゅー...してほしいな」
上目で見つめてくる汐。
狙ってやっているのか、それとも素なのか判断つかないが、あざとい。
深く息をついて凛は汐の頬に触れた。
「ほら、目、とじろ」
そっと自分の唇を汐の唇に押し当てた。ふにゃり、と柔らかい。
ゆっくり顔を離すと、ややムッとした表情の汐がそこにいた。
「どうしてため息つくの?」
拗ねているのか、むくれ顔で唇を尖らせて汐はそう言った。
もちもちとした頬を両手で包みながら凛は頬を染めながら眉を寄せた。
「ため息なんてついてねーよ。ただ、その、...いきなりキスしてなんて言われたら緊張するだろっ!」
ため息ではなく深呼吸だった。
弾む心臓を深呼吸で落ち着かせただけだった。
それがわかると汐は途端に上機嫌になって頬を緩める。
「なんだ、そうだったんだ。ふふっ、凛くん可愛いねー!」
「うるせー可愛いとかいうな」
可愛いのはお前だっつの、凛はそれを心の中で言って汐の頬をむにむにと弄んだ。