第1章 着火
「リオン、サンキューな。あたし、自分自身の事を無視しすぎていたのかもしれない」
「名前……」
リオンは、優しい表情であたしに微笑みかけていた。
ん?でも何か、さっきより近くねーか?
「リオン?」
「名前、僕が、お前を幸せにしたいと言ったら、どうする?」
そう言いながら、リオンはあたしの頬にふれてきた。
っていうか、まてまてまて!!何かかなり顔が近いぞ!
「り、リオン……⁉︎」
近くねーかと言えばいいのに、何故か言葉が出ない。それに、何故かハズい。
何だこれは。何で何かがヤバいと思うのに、逃げる事が出来ないんだ?
リオンはそのまま顔を近づける。
よくわからん何かに圧倒されて、あたしはそのまま目を閉じてしまった。
「………来てしまったか。行くぞ、名前」
「あ、あぁ」
ふれる寸前に、バンエルティア号の気配がした。
リオンも気が付いたらしく、そのままふれる事なく終わった。
何で、あんな事になったんだ?
でもあれって普通、恋人同士がする事だよな?
そうだ!暗い話したから、リオンも何かおかしくなっただけだ!
知らない、ヤバくて変な感じになりそうだった事なんか、あたしは知らない
!
そのまま2人で、みんなが待つ船へと戻っていった。
船は、2人の帰還を歓迎するかのように、広い空に佇んでいた。
名前があまりにも愛おしくて、抱きしめて口付けしたくなったなんて、僕もまだまだだな。
まだ、早い。
名前の心に育ってしまったトラウマを取り除かないと、僕の想いは、ただ名前を傷付けるだけだ。
もう少し、もう少ししてから、僕も、名前に本当の想いを伝えよう。
それまで、僕の理性が持てばいいがな。
END