第3章 お前がいない世界を体験してみた
「名前、大丈夫?最近調子悪いよね?」
『ドクメントも不安定のようだ。あなた程の存在に、一体何が起こっているのだろうか』
しばらく体調が優れないあたしを心配して、カノンノとニアタが見にきてくれた。
ゲーテとの戦いが終わった後、あたしはまた、しばらくダリルシェイドに戻っていた。
そして、また新たな戦いが起きようとしていると連絡を受け、またこのギルドに、バンエルティア号に戻っていた。
けれども、あたしは日を増す毎に、己の疑問に縛られていった。
スタン達と旅をしていた時から抱えていた違和感。
あたしは、何かを忘れている気がする。
それに加え、あたしはずっと、今ここにいる感覚があるようなないような、そんな中途半端な感覚だった。
一体これは、何なのだろうか。
「あ、そうだ。名前、良かったらこれ食べて」
「モンブランか……」
「最近依頼頑張ってたから、疲れが溜まっちゃったのかなとか思って。甘い物食べて、元気出してってロックスが作ってくれたの」
「そうか、サンキュー。ロックスにも伝えといてくれ」
「うん、わかった」
あたしは、あまり甘い物を食わなかったはずだ。
いつから、食うようになったのだろうか。
ロックスが作ってくれたモンブランは、初めて食べたはずなのに、何故か懐かしい味がした。