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夢の端々~「君が笑う、その時まで」短編

第1章 ご縁がありますように


◆◇2/3
 チャリーン、パンパンッ。

 ……結局人混みに逆らえず、気がつけば本殿まであと少しという所までひとり流れ着いていた。

 心の中で何度もバスケ部の皆に詫び、仕方なく財布の中から五円玉を取り出す。

女の子「――ねぇパパ-、なんで五円玉入れるのー?」

 不意に前にいた女の子が隣の父親の袖をぐいぐいと引っ張った。
 父親は「それはな、」と話し始める。

父親「神様に良い縁をくださいってお願いするためだよ」
女の子「エン?エンってなあに?」
父親「縁、かぁ。そうだな……。」
 
 女の子のくりっとした目が父親の目をしっかりと捉える。
 父親は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐさま目を細めて頬を掻いた。助けを求めるように母親に合図を送るが、母親も困ったように肩をすくめるだけだった。

父親「みのりにたくさんの友達ができますようにとか、みんなと仲良くなれますようにとか…そうやってみのりが幸せになれるよう神様にお願いするんだ」

 父親の説明に女の子は「ふうん」とどっちつかずの返事をし、右手に握りしめていた五円玉をしげしげと覗き込んだ。

女の子「じゃあ、みのり皆と仲良くなる!」

 そんな親子が目の前で賽銭を投げ入れ、年始めの願い事をする。

 女の子は父親の話にあやかって皆と仲良くなれるよう願っているのだろうか。
 両親は家族が穏やかで幸せに暮らせるよう願っているのだろうか。

 しっかりと願い事をした少女は季節外れのひまわりのように――寒空の下でも屈託なく笑っていた。

 なら、私も願おう。

 バスケを通じて出会えた縁を大切にして、出会った皆とたくさん笑いあえますように――
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