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夢の端々~「君が笑う、その時まで」短編

第1章 ご縁がありますように


◆◇3/3

 参拝を終えた頃になっても境内の混雑に変化はなかった。
 
 とりあえずリコ先輩をはじめとしてバスケ部の皆にメールで詫びなければとケータイを取り出す。

 直後、手の中のケータイが震えだした。

 あまりに突然の出来事に身体がひどく反応し、動悸をこらえながら電話に出る。

伊織「あ、リコ先輩。明けまして――」
リコ「一体どこにいるんじゃオノレはーっ!!」

 挨拶もそこそこにリコ先輩の怒号が鼓膜を突き破らんばかりに通話口から響いた。

伊織「本当にすみません。どうしても人混みから抜け出せなくて先にお参りしてしまったんですけど…」
リコ「全く…。連絡がないから迷子になったんじゃないかって皆と話してたところよ。で、今どこにいるの?」
伊織「本殿向かって右手です。おみくじとかある…社務所の近くです」

 「ちょーっと話があるから今度こそはいなさいよ」と凄みを利かせた声に制されて、私は問答無用でリコ先輩達を待つことになった。

 これからどうなるかは……ある程度予想が付く。

 それでも年始めに皆に会えると思ったらさっきまでの寂しさが一気に吹き飛んだ。


コガ「おっ、伊織ちゃんはっけーん!」
日向「ったく、心配かけさせやがって…」

 参拝列から見知った顔がちらほらとあらわれる。
 私はひらひらと手を振り、居場所を知らせる。今度こそは見つけてくれるという確信があった。

 参拝を終えたバスケ部一同がぞろぞろとやって来た。

伊織「皆さん、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
日向「こちらこそよろしく――ってなに平然と新年の挨拶をしてんだこのだアホ!」
伊月「はは。初詣早々クラッチタイムかよ……はっ、『初詣後のハツもうめー(で)』キタコレ!」
木吉「おお!せっかくだしハツ食いに行くか?」
水戸部「……。」オロオロ
コガ「木吉。それ、ただのダジャレだから」
黒子「こちらこそよろしくお願いします伊織さん」
河原・福田・降旗「「「よろしく!伊織ちゃん」」」
伊織「よろしく。火神君もよろしくね」
火神「おう」
リコ「じゃあ早速全員揃ったことだし火神くん家で新年会するわよ!」

 ――神様、どうやら今年は初めから皆と楽しく過ごせそうです。
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